
東京・目黒区八雲のロースタリーへ足を踏み入れた瞬間、焙煎したコーヒーの香りに包まれました。思わず深く息を吸いたくなるような、気持ちがほどける香りでした。
その穏やかな香りの中で、焙煎士は真剣な面持ちで焙煎に向き合っていました。画面には、焙煎機内の温度などがリアルタイムで表示されています。モニターで状態を確認しながら、実際のコーヒー豆の色や香りも確かめ、その時々の条件に合わせて焙煎を調整しています。一回ごとの焙煎を丁寧に積み重ねる姿が印象的でした。
ONIBUS COFFEE 八雲店 ロースタリー
正面から見て左側がロースタリー、右側はカフェスペースとなっている
焙煎機の前には、グレーのブルートコンテナがあります。焙煎を終えたコーヒー豆を受け止め、次の工程へ運ぶための容器です。焙煎機や作業台と同じように、そこで行われる仕事の一部として使われていました。長い間、この場所で使われてきたものです。

このロースタリーを訪れる一週間前。私たちは、東京・中目黒にあるONIBUS COFFEE 中目黒駅前店を訪ねました。エレクターの本社から、歩いて1分ほどの場所です。
街に溶け込み、世界とつながる
店内では、日本語と英語が自然に行き交っていました。海外から訪れたお客様がバリスタと言葉を交わし、店内でコーヒーを飲む人もいれば、カップを手に街へ出ていく人もいます。
この場所で話を聞かせてくださったのが、ONIBUS COFFEEを立ち上げた坂尾篤史さんです。ONIBUS COFFEEは、坂尾さんが一人で始めたスペシャルティコーヒーの店です。
株式会社ONIBUS 代表取締役 坂尾篤史 様
「コーヒーで、街と暮らしを豊かにする。」現在、ONIBUS COFFEEが掲げているコンセプトです。坂尾さんは、「コーヒーショップが街に溶け込んでいく感じがいい」と話します。中目黒には、住んでいる人もいれば、働いている人もいる。さまざまな人が行き交う街の中で、店を営んできました。
創業した当時、日本ではまだ、豆の産地や生産者の違いを楽しみながらコーヒーを飲む文化が、今ほど広がっていませんでした。坂尾さん自身は、特別なことをしているとは考えていなかったといいます。自家焙煎をし、生産者が明確な豆を選び、そのコーヒーを最も良い形で届ける。ただ「良いものをつくろう」という感覚でした。
最初の数年間は、思うような反応を得られませんでした。それでも、お客様に求められるものへ方向を変えるのではなく、自分が出したいものを続け、駄目だったら仕方がない。そんな感覚で店を続けてきたと話します。
ONIBUS COFFEEが先に知られるようになったのは、日本ではなく海外でした。ニューヨーク・タイムズやイギリスの雑誌などで紹介され、海外のバリスタやコーヒー関係者の間に名前が広がっていきました。

旅先で、その街の店を訪ね歩く。「この街へ行ったら、あの店へ行け」と、好きな人同士で情報を伝え合う。その中で、東京を訪れる人に「ONIBUSへ行け」と紹介されるようになったそうです。海外で知り合った人が、友人を連れて店を訪れることもありました。「東京に来たから、ONIBUSへ来たよ」。街に溶け込む店が、人を介して世界とつながっていました。
一人では必要のなかった言葉
ONIBUS COFFEEが、現在掲げるコンセプトを明確に言葉にしたのは、2018年から2019年頃でした。一人で店を営んでいた頃には、自分が何を大切にしているのかを、あえて言葉にする必要はありませんでした。しかし、仲間が増え、店舗が増えると、感覚だけでは共有できなくなります。

自分たちは何を提供したいのか。どのような店でありたいのか。会社として考えを言葉にする必要が生まれました。現在、ONIBUS COFFEEでは、「クオリティ」「サステナビリティ」「ホスピタリティ」の三つを大切な軸としています。重要なのは、どれか一つを選ぶことではありません。
「クオリティだけでも駄目ですし、ホスピタリティだけが良くても駄目だと思います」 高い品質を保つこと。お客様を迎える知識と技術を磨くこと。環境への負荷が少ない素材を探すこと。
三つを高いレベルでバランスよく実現することが、ONIBUS COFFEEのブランドをつくっていると坂尾さんは話します。
人との関係も、サステナビリティの中に
坂尾さんは、なるべく「会社、会社」しない組織をつくろうとしてきました。役割やポジションはあっても、人と人との関係は対等であること。トップダウンで押し付けるのではなく、チームの一人ひとりが良い状態で働ける関係を大切にしています。
その理由を尋ねると、坂尾さんは、コーヒー豆を調達する生産国で目にする社会課題について話しました。海外の生産者との関係を大切にし、現地の問題を解決しようとする会社が、日本では従業員に一方的に考えを押し付ける。それでは、つじつまが合いません。
「海外の人たちとの関係性は大切にするのに、従業員との関係性を築けないのは嫌だと思っています」
サステナビリティは、生産国や自然環境に対してだけ向けられたものではありません。一緒に働く人との関係も、その中に含まれていました。
フレンドリーな店の、その奥にあるもの
ONIBUS COFFEEのブランドコミュニケーションを担当する山田さんにも、話を伺いました。ONIBUS COFFEEらしさを、初めて知る人へ伝えるとしたら何か。
株式会社ONIBUS チーフサステナビリティオフィサー 山田 舞依 様
山田さんは、こう答えました。
「何気なく訪れる街のフレンドリーなコーヒーショップが、実は品質や自然環境や社会貢献に真剣に取り組んでいることです」
店頭で目にするのは、バリスタとお客様が自然に言葉を交わす、カジュアルな風景です。地元の人にも、海外から訪れた人にも、いつ来ても安心できるサービスを届ける。常連のお客様同士が、いつの間にか仲良くなっていることもあります。一人で訪れていた人が、週末には友人や家族を連れてくることもあります。

山田さんは、ONIBUS COFFEEがコミュニティの一部になっていることを実感するといいます。その一方で、店では、ごみ削減のために廃棄物を計量し、紙カップを回収しています。日々の仕事に手間を加える取り組みですが、スタッフはその意味を理解し、続けています。
環境負荷を減らすため繰り返し使えるステンレスストローを導入
ONIBUS COFFEEは、B Corp™認証(※)も取得しました。取得後には、お客様や関係者から多くの「おめでとう」という言葉が届きました。山田さんは、スタッフにONIBUS COFFEEで働くことを誇りに思ってもらいたいという考えから、B Corp取得を目指したと話します。
そして、お客様にも、ONIBUS COFFEEでコーヒーを飲むことが、より良い社会につながっていると感じてもらいたい。
「これから、そのような変化をつくり出していきたいです」
※B Corp™認証:社会や環境への配慮、働く人への姿勢、企業運営の透明性など、厳しい基準を満たした企業に与えられる国際認証
本物の素材を取り入れた店内。ONIBUS COFFEEの価値観は、空間づくりにも表れている
さらに、ONIBUS COFFEEではブランドブックを社内で制作し、お客様や関係者へ配布。社外の人たちとのワークショップも行っています。コーヒーやデザート、フードを楽しむだけでも十分。そのうえで、ONIBUS COFFEEの世界観や価値観を、もう少し深く受け取ってもらうためのコミュニケーションツールです。スタッフ向けにも勉強会の機会を設け、一人ひとりがONIBUS COFFEEを体現できるチームを目指しています。
ONIBUS COFFEEのブランドブック

豆が生まれた場所から、一杯になるまで
ONIBUS COFFEEでは、スタッフや焙煎士自身が生産国へ豆の買い付けに行くことがあります。他のロースタリーでは、オーナーだけが産地を訪れることもあります。しかし、ONIBUS COFFEEでは、実際に焙煎を担当する人も現地へ足を運びます。
生産者に会い、豆が育った場所を見る。現地で得た情報とともに豆を受け取る。日本へ届いた豆を、自ら焙煎する。そして、各店舗で一杯のコーヒーとして提供されるところまで見る。
買い付けから焙煎、店頭での提供まで。一連の流れを見届けることができるのは、「やりがいのある仕事です」と焙煎士は話していました。八雲のロースタリーで、焙煎を終えた豆はブルートコンテナへ移されます。

使い心地を尋ねると、返ってきたのは短い言葉でした。
「頑丈ですよね」
「サイズと、入る量がちょうどいいんです」
毎日使っている人の、飾らない言葉でした。
山田さんは、別の角度からブルートコンテナを見ていました。
「ブルートコンテナは、インダストリーな雰囲気を演出してくれるアイテムです。カフェのサービスはフレンドリーでカジュアルなものですが、その裏側にある品質を追求するプロフェッショナルな姿勢によく合います」

店頭の柔らかな空気と、ロースタリーで積み重ねられる仕事。
そのふたつを、ブルートコンテナの姿がつないでいました。
八雲店の店内からはロースタリーを眺めることができる
20年後も、コーヒーを飲めるのか
坂尾さんへのインタビューの終わりに、10年後、20年後のONIBUS COFFEEを、どのようなブランドにしていきたいか尋ねました。返ってきたのは、事業や店舗をどこまで拡大したいという話ではありませんでした。
「20年後に『ブランドをここまで成長させる』『こういうことを実現する』と考える以前に、気候変動でコーヒーが飲めなくなるのではないか、という不安があります」
コーヒーは、気候変動の影響を直接受ける農産物です。事業を続けるのであれば、気候変動に対して行動している農家から、コーヒーを買い続ける企業でありたい。坂尾さんは、そう話しました。ブランドの未来についての質問に、坂尾さんが語ったのは、コーヒーそのものの未来でした。

クオリティを追求すること。環境への負荷を減らすこと。生産者や働く人との関係をつくること。それらは別々の活動ではなく、これからもコーヒーを届け続けるための仕事でした。
長く使えるものを選ぶ
道具を選ぶとき、何を大切にしているのか。坂尾さんは、こう答えました。
「長く使えるものを選んでいますね」
ブルートコンテナを導入したきっかけを伺うと、「海外のロースターが使っていたからですね。アメリカ西海岸やオーストラリアのロースタリーで使われている印象がありました」と話します。
八雲のロースタリーで使われていたのは、焙煎量が増え、焙煎所をこの場所へ移した後に導入したブルートコンテナ。大きさの異なるブルートコンテナが、用途に応じて使い分けられていました。
用途に合わせて複数サイズのブルートコンテナを使用している
この日に使われていたのは、現在販売されているものとは形状の異なる旧モデル。今も日々の焙煎を支えています。
旧モデルのブルートコンテナ(写真手前)
焙煎を終えた豆を受け止め、いっぱいになれば次の工程へ運ばれる。空になれば元の場所へ戻り、また次の豆を待つ。ただ、毎日の仕事の中で使われ続けています。焙煎機の音が響く中、今日もグレーのブルートコンテナが、焙煎を終えたばかりの豆を受け止めていました。
店頭では、使い終わったコーヒー豆の麻袋を地域の方へ無料で提供しています。麻袋は、ブルートコンテナに入れられていました
イベントで使用する用具の収納・運搬には、ブルートトートボックスを使用。「これも頑丈で便利です」と山田さん
(インタビュー&文/EC営業グループ 松岡弘明)
ラウンドブルートユーティリティコンテナ

米国・ラバーメイド製の多用途なコンテナ。優れた機能・デザインをもちながら、他を圧倒する高い耐久性をもち、1968年の誕生以来、世界のあらゆる業界のプロの間で愛用されています。
- 優れた耐久性による高いコストパフォーマンス。 押しつぶされてもほぼ原形に復元。
- ポリエチレン製の本体は、耐水性、耐薬品性、耐寒性に加え、曲げやひねりにも柔軟に対応。強い力を加えても破損しにくい仕様です。
- 豊富なオプショナルパーツにサイズ&カラーバリエーション。
- グレイ、ホワイト、イエローはUSDA食肉鶏肉取り扱い器具グループ加盟商品。
- 75.7L(RM2620YL)は、1986年グッドデザイン賞、1997年ロングライフデザイン賞受賞。
カラーバリエーション

サイズバリエーション

ブルートトートボックス

食品サービス業に理想的なプラスチック製保存容器。高密度ポリエチレン製の耐久性に優れ、業務用からアウトドアまで幅広い用途に対応するボックスです。
- NSF認証取得で食品の安全保管が可能
- 持ちやすいグリップハンドルで運搬がスムーズ
- 底部のリブ構造が強度を向上
- 積み重ねて収納でき、省スペース管理が可能

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