「ホームエレクター」から生まれ変わった「エレクターシェルフ ベーシックシリーズ」。ベーシックシリーズでは、「ホームエレクター・サイズ&カラー」から引き継いだ「オーダーシェルフ」があります。オーダーシェルフでは、シェルフは25mm単位、ポールは1インチ単位でオーダーが可能。カラーは全6色からお選びいただけます。
製品部 デザインマネージャー 長野 広信
(所属組織・役職は掲載当時となります)
ベーシックシリーズのカラーデザイン秘話
ベーシックシリーズのオーダーシェルフで、私はデザイナーの立場からカラーデザイン開発を行いました。企画部門と共同で取み組みました。このプロジェクトが始まったのは2021年の秋ごろです。最初にカラーの変更の話を聞いた時、まずはシェルフのオーダーカラーが求められるシーンを想定し、限られた配色で効率的な配色をしなくてはいけないと考えました。これまでの「ホームエレクター」の家庭用としての位置づけに対して、家庭用・業務用の垣根なく展開していく「ベーシックシリーズ」では、様々なシーンに調和するカラーが求められるからです。
シェルフの新しいオーダーカラーを開発するにあたり、どのようなお客様にご購入いただきたいか、そのお客様がどのような空間を求めているかを調べる必要があると感じ、まずは生活者や日々働く方々が過ごされている空間やインテリアについて、トレンドやカラーに求められていることを調べることから始めました。
カラーコンセプトの選定プロセス
今回は異なる部署のメンバーが集まったプロジェクトで、「ベーシックシリーズ」商品担当のメンバー3名と一緒に主な検討を行いました。まずは、オーダーシェルフを使っていただきたい各空間をリストアップし、候補となりそうなカラーを選定し、評価を行いました。その評価をもとにカラー選定の方針を立て、候補のカラーの絞ぼりこみを行いました。実際に商業施設などにも足を運び、どのような色が使われているかを比較してみたり、候補のカラーの塗料試作を行い、製品に塗装したサンプルを作成し、をプロジェクトメンバーと確認したり、再度、色味の細かな調整を行いました。
具体的なカラーの選定では、既製品のクローム、ブラック、ホワイトの3色では、違和感のあるような空間に対して、魅力的なカラーで、お客様の望む空間に調和したカラーを作りたいと考えていて、シェルフのカラーにどのような役割が求められているかというところから調べていきました。
オフィス、ショップ、クリニックなど……様々な空間を調べてみたところ、従業者、お客様、作業者の立場で、カラーの役割を考慮したところ、ストレスや疲労の軽減、リラックスなどを緩和するために、安らぎを感じるようなやナチュラルなカラーが求められる傾向がありつつ、さらにショップなどでは、空間に調和しつつ落ち着いた高級感につながる色も重要であることがわかりました。よって、求められる空間への調和と考慮しつつそのナチュラルさと落ち着いた印象を両立するカラーの開発を目指しました。
具体的なカラーの評価に関しては、想定される空間ごとに候補のカラーがどの程度相関があるか、2元表を作って関係者に評価してもらいました。それを数値化し、レーダーチャートにして視覚的にわかりやすくしました。おかげさまで、他者の色に関する捉え方を客観的に把握することができました。
カラー選定における苦労と工夫
開発を進める中で難しかったのは当初、ナチュラルなカラーを実際のシェルフに塗装したところ、エレクターシェルフには、相応しくないと感じたことでした。ナチュラルなカラーは比較的明るめの色合いが多く、そのままシェルフに塗ってしまうとシェルフが持つ形状からくる堅牢な印象に対して、軽さとを感じ、塗装の艶の影響もあり、チープな印象を受けました。そのため、エレクターシェルフの世界観に合わないために再検討を行いました。そこで、ナチュラルで安らぎのある雰囲気は残したまま、落ち着いた印象を取り入れるために、カラーの明度を落とし、艶感をできるだけ抑えることにしました。また、現在の視点だけでなく、長くお使いいただけることも考慮し、数多くの調色を行い、候補の中から最終的に3色の色見本を作成しました。
ブラウンはブラックだと印象が強すぎる空間や、木材を多く使っているような温かさのある空間に。
▼ブラウン
ベージュはホワイトだとくっきりしてしまうような空間や、癒しのある空間に。
▼ベージュ
グレーはクロームだと目立ちすぎてしまうような空間等に。
▼グレー
と、お使いいただける想定として選びました。
一番難しかったのは調色でした。液体と異なる粉体塗装という色の特性に制限がある製法でしたので、調色にも時間がかかり、すぐに検証できない点が難しかったですね。最初の試作調色では、落ち着いたブラウン色が明るい小豆色みたいになってしまったり……。
この経験をもとに、いきなり調色せずに、まず液体塗料で目指す色見本を作成して、それを粉体塗料で調色するという方法に変えました。神奈川の大手の試作会社へ出向き、納得いくまで調色してもらいました。
色見本(PANTONE)で指定をした上で調色をお願いしたのですが、いざシェルフに塗ってみると平面で見ていた色とは全く違う印象を受けてしまいました。様々な形状で構成されているシェルフに塗ると艶も相まって本来の色よりも明るく見えてしまうことが判明したのです。
実際には微妙な色の指定を再現してくれて助かりました。今はデジタルで測定して数値化して色を作るのが主流かもしれませんが、まずは自分の目で目指す色を作って確認する大事さを改めて感じました。
オーダーシェルフで理想の空間を実現
刻々とベーシックシリーズの発売予定日が近づくにつれて、振り出しに戻ってしまったらどうしよう……という不安もありました。最終サンプルがイメージとほとんど差がないカラーと艶になっているのを見て正直ホっとしましたね。私は前職で家電製品のデザイン開発を長く行っていました。カラー選定の考え方や定量的な分析の仕方などが役に立ったのではないかと思います。エレクターシェルフはライフサイクルの短い家電と違い、長期的な視点が重視される点が最も異なりましたね。
シェルフとして、どの色も現実的に選びやすい色になり、これからが楽しみです。エレクターシェルフは丈夫で長持ちする商品です。オーダーシェルフはサイズやカラーが選べるので、理想の空間を長く保ちたい方、ジャストサイズのシェルフを求めている方など、多くの方に使っていただきたいです。